Essentialism: The Disciplined Pursuit of Less (日本語題 『エッセンシャル思考 – 最少の時間で成果を最大にする』の原書)の日英バイリンガル書評です。今回もネタバレしながら書評します。
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エッセンシャル思考 原題:Essentialismを英語で読んだ理由
2015年頃から本書の存在は知っていましたが当時の僕は東京で時差関係なく働かされる超ブラック社畜(笑)だったのでこの手の自己啓発本はまるで読む時間がなかったんです(専門書とビジネス本だけ読んでた) 現在シンガポールでさほどブラックでない組織に所属している今だからようやく読めました。
エッセンシャル思考 原題: Essentialism著者とは?
著者Greg McKeownはシリコンバレーの経営コンサルティング会社THIS Inc.のCEO。米国で名を成したが元々は英国出身。アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、リンクトイン等名だたるシリコンバレーのテクノロジー企業への経営アドバイスの実績あり。近年はエッセンシャル思考の講演・ワークショップに従事。HBR (ハーバード・ビジネス・レビュー) やリンクトインサイトの著名ブロガーでもある。スタンフォード大学でDesigning Life, Essentiallyクラスを開講していた(現在もこのクラスをやっているのかは不明)
エッセンシャル思考 原題Essentialismネタバレ・感想 とくに興味深い点とは
では大いにネタバレしつつ、とくに面白かった点を見ていきましょう。
注意: これ以降は壮大なネタバレが登場します。ネタバレを読みたくない方はブラウザで戻るか当ブログの別な記事を読んでね
エッセンシャル思考 原書 Essentialism: 人生の支配権を握れ!
まずエッセンシャル思考とは何ぞや?ですがざっくり言うと「徹底的に無駄を削ぎ落し最小限のアクションで最大の恩恵を得るような思考法」。
当然エッセンシャル思考とは?についての説明で本書は始まるわけですが、それと同じくらい僕の頭の中に強く残ったメッセージが
「自らの人生の支配権を握れ」
ですね。これ著者は本書の全編を通して繰り返し繰り返し何度も言ってます。では自分の人生の支配権(control)を握らない人はどうなるか?
他人にあなたの人生に口を突っ込まれまくってああだこうだと指図されるままの人生になります。
これは僕が持ってる紙の本のその部分の写真ですが、こんな特大のフォントですごーーく目立つように、しかも本書のかなり始めの部分から言ってきてる。
- P10, Chapter 1, The Essentialist, Essentialism, Greg McKeown
(和訳)
人生に自ら優先順位をつけない人は、他人に優先順位をつけられる人生を生きるはめになる。
*和訳は当ブログ管理人による
本書中で著者が繰り返し繰り返し読者に訴えてくるこの一文。じつはこの文を見てすぐに僕が思い出した言葉があるのです。
「自分の人生の支配権を握れ。さもないと他人が君の人生の支配権を握る。しかも君の人生に踏み込んで来る時、そいつは土足で上がり込んでくるぞ」
上記はある方から僕が17歳の時に頂戴した言葉ですが、奇しくも著者が本書中でくり返し訴えてくる重要なメッセージとほぼほぼ同一であることに気づき少し不思議な気がしています。
エッセンシャル思考 原書Essentialism トレードオフの重要性とは
エッセンシャル思考の神髄は雑に言うと「身の回りの膨大な量の無駄な情報・無駄な行動を削ぎ落し最小限のアクションで最大の恩恵を得る」です。したがって常にトレードオフ(何かを諦めて捨て代りに別の何かを選択すること)を熟考して自分の行動を選択することが重要。
そこで著者は4章でトレードオフの大切さについて述べいろいろな会社の実例を挙げているのですがこれは個人の人生においても同じように重要であると主張します。
We can try to avoid the reality of trade-offs, but we can’t escape them.
- P54, Chapter 4, Trade-off, Essentialism, Greg McKeown
(和訳)
トレードオフの現実から逃げることは一時的には可能だが、死ぬまで逃げきることは不可能である。
*上和訳は当ブログ管理人による
僕の個人的な感想なのですがトレードオフの現実を理解しないせいでまともな戦略が立てられない事業会社の実例はもう山ほどあります。もちろんそのような企業の業績は振るいません。またトレードオフの現実は個人の人生設計においてもかなり重要な点であり、ここを見据えてない人が陥るのが
やりたいことは全部やる!と最初だけ息巻く
➡あっという間に意志力も体力も枯渇
➡燃え尽きてしまう(burn-out バーンアウト)
の罠であり悪循環なんです…この実例は掃いて捨てるくらい見てきました。
エッセンシャル思考 原書Essentialism 毎日日記をつけよ?
「人間は忘却の生物である」と言ったのは忘却曲線で有名なドイツの心理学者エビングハウスです。実際に3日前にご自分が食べた夕食メニューすら今訊かれても秒で答えられない方が大半であるように、われわれは毎日経験したことをものすごい速さでどんどん忘れてしまう。
しかしそれではわれわれの日常生活から見えてくる物事の本質を見失ってしまいます。これは非常にもったいない損失であると著者は考えます。
そこで6章で「毎日日記をつけよ」と著者は言うんですね。そして90日に一回ほど同期間の日記の内容を一読すべし、とも言います。そこでかなり良い一文に出会ったのでここにメモっておきますね。
Think of a journal as like a storage device for backing up our brain’s faulty hard drive. As someone once said to me, the faintest pencil is better than the strongest memory.
- P78, Look, Ch6, Essentialism, Greg McKeown
(和訳)
日記をわれわれのあまりに忘れっぽい脳を補完する外付けハードドライブだと考えてみてほしい。その昔私にある人が言った言葉を借りて言えば、どんなに記憶力が良い人間もかすれて良く書けない鉛筆に負けるのだ。
*上和訳は当ブログ管理人による
僕もこの5年くらい日記をつけて毎週毎月3か月毎・6か月毎に振り返る、をずっとやっていたのですがじつは最近さぼってるんですよね。ここ数か月間の日常が日記を毎日つけていた当時に比べてごたごたした感があるのはそのせいもあると本書の6章を読んで感じます。これを機に日記再開します(反省)
エッセンシャル思考 原題 Essentialism 感想 完読した後で分かったこと
エッセンシャル思考 原書Essentialismネタバレ・感想 結局どうよ?
さて完読してみて「エッセンシャル思考(の英語の原書)って結局のところどうなの?」の僕なりの結論ですが…よく言われる言葉に「現在出ている自己啓発本はほぼ全部が何十年も昔に出たほんの数冊のロングセラー古典本の焼き直しである」という言葉がありますよね。正直この本もそれではないか?と思いました。なぜなら本書を読み終えてまっさきに頭に浮かんだのが、
「これ、スティーブン・コヴィー博士の『7つの習慣』(の中の一部分の)焼き直しじゃね?」
でしたから。
いやだからといって本書が悪いというつもりは全くないんですよ。念のため本書のとくに良かった点を4つ挙げておきます。
- とにかく短い←キンドルじゃなく紙の本でもサクッと携行できてサクッと見返すのに適してる
- デザインがすぐれており今風で分かりやすい (ところどころでいきなり大きな大文字のみのフォントで書いてあったり、シンプルな図解を入れてくる・本書は全4パートだが、その各パートの始まりのみ見開き2ページは黒背景に白フォントの本文を入れてくるなど)
- 目次がきちんとしており分かりやすい←ここ地味に重要
- 各章の始めに世界の偉人たちの名言が載ってるがどれも秀逸。しかも全てすごく短い文で端的でカッコいい ←思わず暗唱したくなる
↓*7つの習慣の原書Audible(英語)はなんとコヴィー博士ご自身が朗読してくれてます
エッセンシャル思考 原書Essentialism ネタバレ・感想 エッセンシャル思考は危険?
巷では「エッセンシャル思考危険説」なるものが流布してるらしいのですがどうやら、「この本を真に受けむやみやたらと「断る力」を発揮しまくると組織の中で立場が悪くなったり孤立してしまったりする危険性がある」というのが理由らしいですね。
でも思うんですが本書を真に受けてむやみやたらに断る力を発揮してわざわざ自分の立場が悪くなるまで猪突猛進する人って、どんな本にでも簡単にサクッと影響されていちいち振り回される人なのではないでしょうか。
今このブログ記事を読んでいらっしゃる皆さんのように冷静に落ち着いて自分で考える力のある人・ある程度人間的に成熟している方々は「エッセンシャル思考危険説」なんて全く気にしなくてよいと僕は思いますよ。
エッセンシャル思考 英語の原書Essentialismネタバレ・感想 まとめ
では「エッセンシャル思考」の原書Essentialismの感想まとめです。
- 21世紀の現在は猛烈な情報過多社会なので人生の最重要事項を見失ってしまいがち ←より良い人生を送るには不要なノイズを「意図的に」遮断すべし
- 全てにおいて優先順位をつけよ ←浅い考えでやみくもに「やりたいから全部やる」アプローチではすぐ燃え尽きてしまう(だからこそ①が重要)
- 自分の人生の優先順位を決める決定権を握れ←それをガッツリ握らないと他人に支配される人生を歩むことになる
本書のメッセージはざっくり上記3点に要約できると僕は考えます。
そして上記3点を達成するために不可欠な行動と思考法の2方向から重要ポイントを著者はいろいろ紹介してるわけですが、僕は学生時代に自己啓発本界の2大古典ともいえるコヴィー博士の「7つの習慣」とD. カーネギーの「人を動かす」を読んでしまっていたせいか正直「これもあの古典2冊の焼き直し…」感が否めませんでした。
とはいえ上に書いた通り本書は優れた点も多くあります。無駄を削ぎ落した簡潔なメッセージ・難しい言葉を避け分かりやすく一番大事なポイントを伝える読者へのアプローチの仕方はとくに学びが多いと思いました。
サクッと読める点もかなり良いのでぜひ興味ある方は手に取ってみて下さいね。
*ちなみに本書のAudible版ではなんと、著者のグレッグさんご本人が朗読してくれます(グレッグは英国出身なので英国英語ですが、なかなか良い感じです)
では今回は以上です。
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