今回は
「英語学習の恩恵」vs.「AI翻訳の発達で今後は英語学習は不要になるって本当?」
の2点を中心に考察します。
英語を学ぶことの利点・恩恵って何?
先日Twitterでも話したことですがこの10年間くらいに留学先や仕事で付き合いのある外国人から何度も聞かれたのが、
「このグローバル経済の時代に、どうして日本人は英語を学ばないのか?」
「なぜ日本人は英語ができないのか? (そして君は日本人なのになぜ英語が話せるのか)」
という2つの質問でした。おかげでこの2つの質問には目をつぶっていても答えることができるわけですが、
そもそもこれらの話を振ってくるのは (時々日本で見かける日本びいきの人や日本の漫画・アニメの超マニアの人達ではなく) 普通の外国の人であり、その普通の外国人の皆さんは
「仕事上で日本人と交流を試みたことがあったが、英語が通じないのでお手上げだった」
とか
「日本人とはこの国際化も久しい時代に英語を学ぶことを拒むような、意固地でおかしな人達だ」
といった困った経験や知識不足からくる先入観があって私に上の質問をしてくるわけです。
つまり、それらの困った状態を改善・解消する、また上のような先入観をちょっと壊すだけでフツーの外国人の方にとって「自分の気持ちを分かってくれる・疑問を解消できる (informative & educationalな)有難い存在」となりますし、相互理解を進めるための助けにもなります。
英語を学ぶことで【資産】が手に入る
上記のようなことができると自分に付加価値が付き、それだけでほかの日本人と自分との差別化を図れるようになります。そしてそれは次第に自分が持つ人的ネットワークという「資産」となってゆきます。
(日本びいき・日本文化マニアの親日派外国人ではない)このような普通の外国人と仕事をする中で、日々の業務の中で少ない時間で上のような日本人についての素朴な疑問に分かりやすく答える・そしてそれを積み重ねていくわけです。
それと同時にもちろん仕事でも結果を出す、プラス絶対に相手を裏切らない・無責任なふるまいをしないといった対応を続けていると、業界内の片隅で少しづつ評判が広まり回り回って自分の仕事の幅が広がる (びっくりするようなところからの予期せぬ紹介案件等)等の恩恵として返ってくることとなる例が多いです。
(さまざまな業界で上記ができる人も限られているので上記の事を継続していると ”あいつはgo-to guyだぞ” として業界内でちょっとだけ名前と顔が知られるようになります)
このような人的ネットワークという資産が出来てくると、思わぬ機会・恩恵が手に入る【入り口】にもなりますがそもそもの語学力が不足していてはまったくお話になりません。
英語が仕事で使えると収入が増える
また英語が仕事で使えるようになると単純に収入が増えます。
たとえば私の仕事ですが日本国内でこの仕事をやっても原則的に内容は同じなのです。
しかしその同じ仕事を日本国内外で「英語でもやる」というそれだけで、自分が日本国内のみで活動していた場合と比較しておそらく年収にして最低でも数百万円は違うと思います。
もっと分かりやすいデータを紹介しますと、たとえばこのサイト記事とかですね↓↓
英語力と年収は比例する!?英語レベルが上級の会社員の6割が年収1000万円プレイヤーだった
エンワールド・ジャパンが正社員で働いている1,928名に「英語レベルと年収」のアンケート調査を実施した結果、英語レベル「上級」では年収1,000万円以上が約60%。「初級」では約10%となった、という記事ですね。
そのほかにも、このダイヤモンドオンラインの記事とか↓↓
英語力の差が年収の差に表れる
https://diamond.jp/articles/-/100712?page=2
単純な日常英会話レベルの人とビジネス英語レベルの人との間には年収にして200万円の差が表れている、というデータ。
上のリンク以外にもほんのちょっとググっただけでこのような高い英語力と高い年収の相関関係データは山ほど出てきます。
あまりよろしくない言葉だと思うのですが、これが「英語格差」というものなのかもしれません。
AI自動翻訳の発達で英語の勉強はしなくてOKってホント?
時おり世の中には人をやたらと怖がらせようと煽る「煽り屋」がたくさん湧いて出るときがありますが、煽り屋の方たちはよく事情を理解して煽っているのか?と疑問になることもあります。
おそらくこの煽り屋さんたちは7年前に出たあの有名なOxford Universityの論文のことを言って騒ぎ立ててるんですよね (彼らがこの論文を読んだかどうか甚だ疑問ですが)↓↓
THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?
by Carl Benedikt Frey/Michael A. Osborne(2013)
https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/future-of-employment.pdf
なんと↑のリンクで元の論文が読める!しかも無料で! (全文英語)
興味がある方は論文内のAppendixについてる「計702種類の各職業がどれだけAIに代替され易いかのレベルを示す表 (順位が低いほどAIに代替されやすい)」をご参考。
AIに奪われるリスクの高い職業リスト702職種のうち、私の本業は(今はどれかは書きません) 弁護士 (115位 代替確率3.5%)と比べると低いですが野生動物保護区管理官 (160位8.0%)よりは高い某職種ですのでまあ大丈夫かとは思います。
ちなみに翻訳・通訳は265位 (38.0%) なので、日本でよくわからん人たちがギャンギャン言ってるほど代替されやすいと言えるか??というと言われるほどでもない感じです。
AI自動翻訳の実力ってどうなの?
さて気になるAI自動翻訳の威力ですが、現時点で自動翻訳がどれくらいイケてるか(もしくはイケてないのか)みんな知ってて言ってるのかな?と疑問に思ったりします。
たとえばYouTubeの自動翻訳字幕生成機能。
あれ、管理人はときどき学者のプレゼンとか観てる最中に内容を聞くのと同時にAI自動字幕のどこが間違ってるか目を光らせてチェックしてるのですが、
今のところ平均値で正解率7- 8割ってとこですよ (平均値であるのに注意。つまり6割から10割辺りまでブレます)。
しかもこれ、「バリバリのネイティブの英語を、英語の字幕に転換する」でこのレベルなんですよ。
さあこれがもし長文の日本語だったらどうなるでしょうか??
また話題の「DeepL」ですが、書かれた文章であれば長文であってもけっこうイケてるのですが、これが双方向からどんどん話されている日本語+英語の同時通訳であった場合どうなんだろう?という感じです。
超ハイコンテクストな日本語という言語を、同時通訳で、万人にあまねく無料で広まるか?またそうなるまでに、いったいあと何年かかるか?
NMT (Neural Machine Translation: ニューラル機械翻訳) がすごく不得意な作業として「話し手が文にこめた情緒を伝える」が挙げられますが、このへんは専門家によると英語のようなシンプルな言語ですら、「あと50年かかってもムリ」との説もあります。
ましてや日本語をや、状態かと。
技術的特異点”Technological Singularity” は起こるのか?
まあこの点は個人的にはもうお遊びの世界なのですが、気にしてらっしゃる読者の皆さんもけっこうな数でいらっしゃる様子なので書きますと世の中には地球は
Technological Singularity 技術的特異点 (シンギュラリティ)といわれる驚天動地の大変革に2045年頃に直撃される、とする説があるわけです。
ではさっそく管理人個人の考えを申し上げますと、シンギュラリティは当分は来ないと思っています。
なぜならシンギュラリティ=技術的特異点が起こる瞬間って機械たちが自律思考ができるようになる(すなわちself-awareとなる)はずでは?と思うのですが、どう考えてもそうなる材料がないのですよね。
いろいろ調べてみたのですがシンギュラリティは「おとぎ話」の域を出ないのではないかと考えてます。
じつはより高い英語力が必要な世の中になる
いろいろ世界中で出てる資料を読んだりしてみたのですが、やはり今後はDeepLやGoogle大御神() が間違う部分を人知でおぎなう必要がある世の中になる(じつは上記で述べたようにすでにそうなってきている) ので、じつはこれまで以上に高い英語力を持つ日本語話者が必要とされるようになるようです。
あと単純に疑問なのですが、仮にあと10年20年くらいかけてDeepLやGoogle大御神が超自動同時通訳者となって無料で誰でも使えるようになったと仮定してですよ。
現時点で
「英語学習はAIに任せるから俺はぜんぜんやらない! キリッ」
と言ってる皆さんは本気で、
「その10~20年間ずーーっと英語学習はぜんぜんやらない」
つもりなのでしょうか?
その10~20年間のあいだ、上に挙げた理由により英語力磨きを現時点で始めた人はどんどんより高い収入・よりゆとりある生活・より豊富な居住国の選択肢などの恩恵を手に入れるのに、ホントにその20年間ものあいだそれらの恩恵を
「自分はそんなもん要らないです。ちょっと努力するよりもボンビーのほうが良いんです!」
であきらめるのでしょうか?
まとめ: AI自動翻訳のせいで今後は英語学習は不要になる?
では今回のまとめポイントです。
- 英語を学ぶことで差別化・付加価値・人的ネットワークという資産が手に入る
- 英語を学ぶと収入が増える
- AI自動翻訳には限界がある
- 技術的特異点Technological Singularityは来ないかもしれない
- AI自動翻訳が進化することで、むしろ今後はよりいっそう高い英語力が必要な世の中になる
さて正直に申しますが、じつは管理人は「3ヶ月間寸暇を惜しんでご自分にピッタリの適切な学習法で英語に取り組めば中学卒の人であれば誰でも日常英会話ならマスターできる」と思っています。
あとそれ以上の洗練された英語力をつけるのにも、日本の高校を卒業した人なら総計1年間寸暇を惜しんで気合入れて学習すれば英検準一級に余裕で合格ないし1級にギリ合格くらいまで到達できると考えています (もちろん海外留学なしで)
たしかに英語力向上は1~2か月程度では効果が見えづらく一定の時間が必要ですが、じつはこうしてみると適切な訓練方法でやりさえすれば、案外コスパ良い投資だと思うのです。
(ドメドメから英検1級やTOEFL iBT100以上を目指す人はまた別な話となりますが)
では今回は以上です。